アーク ザ ラッド Arc The Lad
幻界(戦闘9)

アークザラッドは1995年にソニー・コンピューターエンターテイメントによって発売された、
PlayStation用のソフトである。

PS初期に作られた大作RPGであり、また数少ないPSの名作の一つに数えられる。
PS初期の、しかもソニーが発売元であるということで、PSの機能、特色を生かした様々な試みが見受けられる。
随所に3D描写が使われ、音声がバンバンなり、ムービーもいたるところで流れる。
まさにSFCからの時代の移り変わりを感じさせられるソフトである。

中でも一番の特徴は、メモリーカードという外部記憶媒体を必ず利用するというPSの最大の特徴を生かした「コンバートシステム」だ。
そう、このソフトは「クリアデータを次作に引き継ぐことが出来る」のである。

この画期的なシステムによって、ソフトは一本で完結するもの。
という当たり前なことが完全に覆されたのだ。

これによってユーザーは、続きが出たときに鍛えたキャラクターやアイテムがまた使えることになり、
今まで以上にしっかりとプレイすることに意味を見出せると同時に、
続きもので「同じキャラたちがでているのに何故か弱くなってる〜」
等といった違和感が払拭でき、表現としても一歩進んだことが出来るようになった。


さて、内容であるが、実際のところこのアークザラッドというゲームは非常に短い。
おそらく初プレイの人でも10時間前後で終わらせることができるであろう。
これは従来のRPGの1/3くらいである。
が、短いながらも矢継ぎ早に次々と展開されるどシリアスなイベントはドラマチックで、
決してプレイヤーを飽きさせない。
とても10時間で終わったとは思えないほどの充実感が得られるのだ。
そして、次を予感させるラストシーンは、否応にも次回作への期待を感じさせられる。
そう、駄作だったら決して次を楽しみに待とうという気にはなれないのだ。

それに加えてアークザラッドには「50階ダンジョン」や「闘技場」といったやりこみ要素も搭載されている。
普段なら「本編が短いのにそんなところに力を入れるなんて本末転倒」というところなのだが、
この作品の場合は話が違う。
なぜならば、アークザラッドはデータを引き継げるからだ。
これによって、やりこみや隠し要素が単なる自己満足だけではなく意味のある行動になったのである。
これは非常に画期的で重要なことだと思う。

アークザラッドの魅力の一つにその戦闘がある。
これは従来のSLGに搭載されるようなタクティカルな戦闘をRPGライクに簡素化したようなものである。
具体的にいえば、基本的には平地であり高低差がある部分では魔法以外の攻撃はとどかない。
また、位置指定の移動方法とは違い、キャラクターを直接動かす親しみやすい操作になっている。
これによって、SLGの特徴である「戦闘フィールドでイベントを繰り広げる」ということが可能になり、
より臨場感あふれる表現を可能すると同時に、コマンドを簡素化することで「物語を楽しみ、
盛り上げるための戦闘」という意味合いを強く提示したものになっている。
その上戦闘中にキャラクターがガンガンしゃべるので、より一層盛り上がるのだ。
アークザラッド1独特のローテンポでゆったりとした戦闘は病みつきになってしまうから不思議だ。


そんなこんなで色々な可能性を提示し、また大成功をおさめたアークザラッドであるが、
ただ一つ残念なのはコンバートシステムを本格的に利用し、
また成功させたのがこのソフトくらいのものであるということだろうか。